この記事は海外の大学への歯科留学について知りたい方向けに書いています。
「海外で歯科医師になってみたい方」や「どのようにしたら海外で歯科医師になれるか知りたい方」はこの記事を読むと海外、特にアメリカへの歯科留学でできること、行く方法が分かります。
この記事を書いている僕は、実際にアメリカの歯周病専門医のプログラムへの留学経験があります。僕がアメリカへの歯科医師の道を目指す過程で知りえた情報や経験についてご紹介することで、海外で歯科医師になりたいと考えている方のご参考に成ると思います。
この記事を書いている僕は日本の歯学部を2007年に卒業した後、研修医を経て歯周病学を専攻し、歯周病専門医として東京にある歯科医院を経営し、実際にアメリカのフロリダ州にある歯科大学の歯周病専門医のプログラムに留学し、レジデント生活を送った経験があります。
僕がアメリカへの歯科医師の道を目指す過程で知りえた情報や経験についてご紹介することで、海外で歯科医師になりたいと考えている方のご参考になると思います。
海外に歯科留学する目的をはっきりさせましょう
海外に留学と一言でいっても、行く人によって目的が違うはずです。
- アメリカで歯科医師のライセンスが取りたい
- アメリカで研究をしてみたい
- 日本で習えないことを学んでみたい
- 歯科留学をすることで箔をつけたい
など様々です。
どの目的も素晴らしいものですが、目的と手段が一致していなければ留学自体が無駄になってしまうので、まずは目的をはっきりさせることが大切です。
例えば僕の場合、『アメリカで歯周病専門医に免許をとってアメリカで開業し、歯科衛生士を8人雇って1日に8人の患者を診させ、そこで見つかった歯周病患者を歯周病専門医である僕が治療する構図のクリニックを作る。売上の規模は5億円。』という具体的なゴールを決めて留学の準備をしました。
つまり僕はアメリカでビジネスがやりたかったのです。
そのために何が自分の武器かと考えた時に、全く知らない分野に新たに挑戦するよりも自分の知っている分野で、日本より市場規模が大きいい場所としてアメリカを選びました。
さらに留学期間中、アメリカから自分のクリニックをマネジメントすることが出来たら世界中どこにでも住めるなとも考えました。時間的、地理的な自由が欲しかったからです。
僕の例は特殊かもしれませんが、自分が人生で何を達成したいのかを突き詰め、そのためにどんな留学が必要なのかを逆算で考えて下さい。

歯科留学はアメリカンドリーム!
アメリカの歯科医療分野は非常に魅力的で、労働環境が日本とは全く違います。
アメリカの歯科医の労働環境は基本的に週休5日の朝9時から夕方5時までの8時間労働ですが、労働単価が大きく異なります。
例えば、アメリカの小児歯科医はプログラムを卒業した直後の年収が、約2000万円です。
『歯周病専門医』は約3000万円、『歯内療法専門医』は年収約4000万円とかなり高待遇の所得です。
歯内療法専門医に関しては、アメリカの心臓外科医と同等の給料水準になっています。
これは医院の売上ではなく、個人に支払われる給料、つまり勤務医の給料でこの額なのです。
ですから、当然日本の政府に左右される診療報酬に一喜一憂されたり、医療技官によるただ単に税金の支出をその場しのぎで抑えたいがためのわけのわからないルールに縛られず、本当の意味での医療に没頭することができます。
当然、厚生労働省の官僚たちも一生懸命働いていらして、彼らなりの正義と義務があるわけなので単純に否定はしたくありませんが、国の流れを見ていくとどう考えても歪んでいるようにしか見えません。
私たち歯科医師、特に若い世代は国の方向を良い方向に導けるように様々なスキルをもった人材を集めていく必要があります。
その一つに『アメリカでの歯科医師のライセンス』を持っているというのがあっても良いと思います。
アメリカ歯科留学は難しい?
日本人の歯科医師がアメリカでライセンスを取ることは不可能ではありません。
もちろん、英語で試験を受けなければなりませんが、単語が専門的なだけでやり始めるとすぐに覚えます。
ただ、量が膨大なので時間をかけて勉強する必要があります。
日本で歯科医師ライセンスを持った先生が、アメリカで歯科医師ライセンスを取得する方法はいくつかあります。
歯科大学に入り直す
これは王道ですが、かなり難しいです。
なぜならアメリカの歯科大学は通常の大学を卒業し、かつ小学生の時から大学卒業の時までの成績がトップでい続けなければ、確実に受からないからです。
アラバマ大学など大学によっては海外の歯科医師が歯学部に編入できるプログラムがあります。
4年制の歯学部の3年目から入るパターンが多いです。
3年生と4年生の課題をこなし、NBDEという国家試験を受けて合格すると歯科医師のライセンスが手に入ります。
このライセンスの良い点は全米どこでも、一般歯科医師として開業ができることです。
カリフォルニアでも僕のいるフロリダでもどこでも「歯科医師」として働くことが出来ます。
しかし、ハワイは人気があって歯科医師の量を調整していたりするので人気の州で必ず働けるとは限りません。
しかも新たに4年間学生をするわけですから、授業料のほかに生活費のことを考えると大体3000万円以上かかると考えたほうが良いです。アラバマ大学の編入プログラムの場合、授業料が年間1500万円、合計3000万円します。高いですね。
ですので、歯学部に一年目から入るのはおすすめできません。
このプログラムはアメリカで働きたい人は世界中にいるので、その心理を利用したビジネスだと思います。

歯科大学に編入する
これは正攻法で、しかも確実にライセンスが取れます。
これはアメリカの歯科大学の2年生の後半や3年生から編入する方法で授業料と生活費を大幅に節約できます。
大学によっては、外国人向けの枠を作っていて少し授業料が高かったりしますが比較的狙いやすいのではないでしょうか?
最近だとアラバマ大学がこの制度を始めましたが、ほかの大学もやっています。
この方法の良い点はアメリカ全土で開業できる可能性があることです。
アメリカのライセンスは日本とは違い、歯科大学を卒業した時点で歯科医師を名乗ることができます。
しかし、歯科医師として診療するには『NBDE』という国家試験のような試験を受けなければなりません。
これに合格した上で、自分が働きたいと考える州に行き、『SBDE』という実技試験を受けて合格すれば、その州で歯科医師として働くことができます。
どうやらこのSBDEで歯科医師の数を各州ごとに調整しているようで、人気のあるフロリダ州やハワイ州はかなり競争率が高いようです。
追加:多くの大学では応募の条件にNBDE Part1の合格を設定しているところが多いです。
まとめるとアメリカの歯学部に編入するためには、「TOEFL」と「NBDE Part1」に合格をしていなければいけません。

専門医コースに入る
この方法が1番オススメです。
僕が行った方法がこれで、ペリオやエンド、矯正などADAに認可を受けた2年以上のスペシャリティープログラムに入ると、専門医としての免許を得ることが出来ます。
歯学部に入るパターンと同じくNBDEという国家試験は受けなくてはならないのと、海外の歯科医師は卒業後は6つの州でしか働くことが出来ませんが、年収は一般歯科医の2倍はあるので、卒業後いきなり劇的な年収が期待できます。
また歯科医師ライセンスを取得するコースとは違い、授業料がなかり安く、アラバマ大学のペリオのコースであれば年間200万円くらいの授業料なので節約ができます。(アラバマ大学のペリオは人気なので入学はかなり難しいです。)
ほとんどの専門医コースは応募に条件があって、「TOEEFLで一定水準以上の点数を取得して英語が堪能であること」と大学によっては「NBDEに合格していなければならない」ことが条件です。
僕の入ったプログラムはNBDEは条件ではありませんでした。
NBDEはPart1とPart2の二部構成で、Part1は主に基礎系の内容、Part2は臨床系の内容です。
私が知る限りは大体Part1の合格を、応募資格にしていることが多いです。
まとめると専門医コースに入学するには「TOEFLで高点数をとっていること」とさらに大学によって「NBDE Part1に合格していること」が条件です。

専門医コースは就業地が限られる!
しかしこの方法の良くない点は、アメリカ50州のうち限られた6州でしか歯科医師として働けないということです。
その6州は以下の通りです。
- テキサス州
- コネチカット州
- イリノイ州
- ミシガン州
- ミシシッピー州
- オレゴン州
- ウィスコンシン州
他の州で働くとすると、University Hospitalのような大学付属の病院の中での勤務に限られます。
大学の教員やスタッフの枠は無限ではありませんから、確実に大学病院で歯科医師として働けるという保証はありません。
ですので、この州で働きたい方であれば、この方法は確実のメリットがある方法です。
僕のアメリカ人の知人はこの州の中だったら、テキサス州→コネチカット州→オレゴン州の順で魅力を感じると言っていました。
テキサス州は日本から直行便が出てるし、気候も良いのでオススメです。
実際は働ける州はもっと多いらしいですが、アメリカならではの州ごとのルールがあるので、調べなくてはなりません。
アメリカで働いた年数によって他の州が免許の交付をしてくれたりするようです。
また、プログラムにもよりますが、海外の専門医のコースは授業料が歯学部に入るよりも安かったり、給料をもらうことも出来ます。
特に州立大学は、給料をくれる大学が多いので人気が高いです。
自分がどんな分野に興味があるのか、卒業後はどんなところで働きたいのか、授業料をどうやって払っていくかなどをトコトン突き詰めて下さい。
今、書いた情報のさらに詳しい情報は僕が留学準備中に読んだこちらの書籍で確認できます。
The International Dentist’s Guide to Obtaining a U.S. Dental License (English Edition)
この本は韓国の歯科医師が実際にアメリカでライセンスを取得した際にあまりにも情報が少なすぎて困った経験があったことから、新たにアメリカで歯科医師になりたい方に向けて書いた本です。
全編英語で書かれていますが、これくらいはスラスラ読めなければアメリカに留学することはできませんから、力試しの意味でも読んでみてください。
電子書籍で販売しているので、購入してすぐ読むことができます。
ここに書いてある内容は、
- どの大学にどんなコースがあるか
- NBDEを突破するために何をするべきか
- ライセンスを取るための各州ごとの情報
などが詳しく掲載されています。
実体験に基づいた本なのでかなり使える情報です。
海外で歯科留学をするために必要な準備
歯科留学に限らず海外で学ぶと決めたら、まずは英語の勉強からはじめましょう。というかTOELやIELTSで点数を取らないと留学は出来ないです。
殆どの大学は80点以上が合格ラインなのでまずは80点を目指しましょう。

また特にアメリカはエッセーをやたら書かされるので、ライティングの練習も大切です。
これもTOEFLの勉強をしていけば強制的にやることになりますが、間違った方法を続けていても意味がないので、TOEFL専門のスクールや添削システムを利用したほうが早いです。
TOEFLはReading, Listening, Speaking, Writingの4つのカテゴリーに分けられていて、スキル的に1番影響力が大きいのが、「語彙力」です。
その次に大事なのが、「リスニング力」
Readingを除く、他の3つは問題が音声で出題されたりするのでリスニングの練習をしておくと有利です。
しかし、知らない単語を聞き取って理解できるわけはないので、語彙力を高めることがリスニング力を高めることに繋がります。
僕が実際に使っていたスクールや添削システムについては、歯科留学のためのTOEFL対策【私はこうして合格しました!】の記事を参考にして下さい。そこに僕がやったすべてが載っています。

アメリカ以外に歯科留学したい場合
おそらく英語圏への留学を考えていると思うので、英語圏のアメリカ以外の場所への歯科留学について解説します。
ニュージーランドやオーストラリア、イギリスなどが歯科留学先として考えられます。
研究や経験を積むことを目的とした留学であれば良いと思います。なぜならプログラムを卒業後、免許が取得できるかと言うと難しいからです。
もしもその国の家族や配偶者がいるのであれば永住権などの現実味が増すのでトライする価値はありますが、そうでなければライセンス取得、現地での勤務を目的とした留学先としてはおすすめしません。
移民に寛容なアメリカですらワーキングビザを取ることが難しくなってきています。人気のスウェーデンなどのヨーロッパ圏も同様です。
日本で働くのをメインで考えていて、誰にも負けない知識や経験をつけたい、泊をつけたいなどであれば有効です。
アメリカ歯科留学 まとめ
歯科に限らず、留学をするためには強い動機と戦略、孤独に耐えられる精神力が必要です。
一度歯科医師になった後に、留学するというときっと周りの人たちは猛反対をしてくるでしょう。それが日本です。
でもそれを押しのけてでも留学したいという気持ちがあればきっと出来ます。
とくにアメリカは世界中から猛者どもが集まってきますので、採用する教員としては強いモチベーションを持った人材、ひときわ輝いている人材が欲しいので最終的には成績はあまり関係なく採用プロセスが進みます。
自分たちのプログラムで数年過ごすレジデントに「頭はいいけど正確が悪いやつ」は採用したくないからです。だから最後まで頑張れる精神力と強い動機を持っていればきっと合格します!
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アメリカ歯科医師ライセンス取得法②【NBDE攻略】
前回のおさらい 前回、アメリカ歯科医師ライセンス取得法①【アメリカ歯科留学】のところでアメリカ歯科医師ライセンスを取るためには、NBDEという試験に合格しなければならないという話をしました。 そこで今 ...
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